もう何十年も前のことだが、仕事で八戸に行ったときに地元の担当者が「いちご煮」を食わせると言って大きな料理屋に連れて行ってくれたことがある。当時の私は若かったこともあり何も知らず、苺を煮たものなんぞ気色悪くて食えるかと思いながら年上の担当者の後をついていった。
出されたのが大きな塗り鉢にたっぷりと入った汐の香も高いウニとアワビの潮汁だった。担当者はとまどい顔の私を嬉しそうに見ながら「いちご煮だ、食え。」と一言。以来今までに数回しか口にする機会を得ていない。
八戸市鮫町の「味の加久の屋」から「いちご煮」の缶詰が出ているのを知った。缶詰のラベルに書いてある「いちご煮炊き込みご飯」にしてみたが炊きあがる時の香りが烏賊飯でも作っているのかと思うくらい汐の香が高かった。
本来なら白を開けるのだろうが我が家に白ワインの買い置きはない。ミスマッチかもしれないがBordeauxの"Chateau Jandille 2000"を開けた。案外、この赤ワインの干した果物の香りが「いちご煮炊き込みご飯」に合うのだ。