日本点字図書館に行ったのは「おいしいパズル」を買うためではなく「出版UD研究会」が主催する講演会「書体の作り方・選び方 」を聴講するためだ。
定員60名の会場は講演が始まる頃は満席になり、主催者からは空いた席はつめて座るようにとアナウンスがあるほどの盛況だった。
隣の席に座った見覚えのある人、なんだ「韓日タイポグラフィーフォーラム」でご一緒させて頂いた筑波技術大学の劉先生じゃないですか。この劉さん、ご本人によると中国三国時代の武将、劉備玄徳の直系の子孫だとか。
『お久しぶりです。その節はお世話になりました。』
講師は字游工房の鳥海 修さん。
文字の歴史から説き起こしキャップス社のために開発したばかりの「文麗仮名」を例に仮名デザインの手順を詳細に語ってくれた。
鳥海さんは文麗仮名のコンセプトを決めるに際し夏目漱石の「こころ」をじっくり読み込んだという。
開発から最終バージョンに至るまでの繊細な修整の足跡を一覧表示し、変更部分を示しながらその理由を説明されたときは、誰もが文字デザイナーになれると錯覚したのではないだろうか。そのくらい分かりやすく親しみやすい講演だった。
講演の最後に今は全く見る機会が無くなってしまった溝引きを実演してくださった。
ポスターカラーに溝差し、ガラス棒、面相筆で文字を書いていた頃が思い出された。
講演の後は早稲田通りの"Picasso"(電話:03-3205-0491)に席を移して鳥海さんを囲んで懇談会が開かれた。
この懇談会でフォント業界の最新情報にも触れることもできて、収穫の多い一日だった。