話題のモロッコ映画「モロッコ、彼女たちの朝」の原題は “Adam"。全編に漂う不安感は最後まで消えなかった。
未婚の妊婦サミア(ニスリン・エラディ)は実家を捨て村を出てカサブランカにやってくる。大きくなったお腹でメディナの戸から戸へ、仕事を求めて歩き続けるが彼女を雇う家はない。
一度はサミアを断った小さなパン屋を営むアブラ(ルブナ・アザバル)だったが、サミアのことが気がかりで二、三日のつもりで家に入れる。祖母から教えられたというパン作りが上手なサミアの登場で、夫の死後は心を閉ざして働き続けてきたアブラに小さな変化が現れる。
アダムはサミアが生まれてきた子供につけた名前。祭り明けの早朝、アダムを抱いたサミアはそっとアブラの家を出てゆく。イスラムの世界で過酷な人生を強いられるのだろうサミアとアダムを通して、マリヤム・トゥザニ監督が訴えかけてくるものが見えてくる。
アブラを演じたルブナ・アザバルを見たことがあると思ったが、「灼熱の魂」でも好演していた。
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