2007-12-21

失神するほどの痛み

 陸橋が大きくカーブして6号線金町広小路の上にさしかかる辺りを松戸から金町に向かってバイクで走っていた。防音壁が切れたところでビルの切れ目から西日が眼を直撃した。一瞬目がくらみ慌てて顔を伏せたが、直後に時速60~70km位で走行していたバイクが何かにぶつかったように感じた。
 気がつくと体は西日を浴びたところから70m位飛んでいた。ヘルメットは完全に割れている。ジャケットの胸は裂けてボロボロ、血糊がべっとり。肋骨でも折れて胸に刺さったのかも知れない。そっと深呼吸すると胸は痛まない、大丈夫みたいだ。
 ゆっくり立ち上がろうとすると右足が全く動かない。右膝の上で普通なら曲がらない向きにグニャリと捻れ、白い骨が露出し、かろうじて1/3程残して股に繋がっている自分の足を見た。
 救急車で運ばれた病院でねじ切れる寸前の足をとりあえす接合する。この手術、折れた骨や切れた腱をホッチキスのお化けのような器具で行う。痛いところがあったらそこは生きている部分なので、痛みを我慢しないで必ず痛いと言うようにとの医師の指示。麻酔無しで行うので我慢できる痛みではなかった。
 更に手術に入る前に、感染症がにかかっていれば手術が上手くいっても数日後には発症する。そうなったら足を切断することになる、発症の確率は50%だと医者に言われた。
 幸い感染症は発症しなかった。
 今まで通りアマチュアレスリングを続け、そのためのトレーニングも始めたいという強い希望を受け入れてくれた病院が、各病院からそれぞれの専門医を集めた緊急チームを結成し欠損した骨を補修する二度目の手術を行った。成功は50%だと手術前に説明があったが成功すると確信していた。
 幸いこの手術も成功。術後は傷口から感染症に罹るのを防ぐために無菌室で過ごすことになる。

 腱や組織を縫い合わせた体内の糸を抜糸するときもきつい痛みが伴ったが、ようやくリハビリテーションができるところまでこぎつけ、指先も少しずつ動くようになる。
 今のままリハビリを進めても膝は90度くらい曲がるようになる、しかし非常な苦痛が伴うが完全に曲がるようにすることも可能だと、リハビリテーションが次のステップに進む段階で言われた。
 元のように曲がらないとアマチュアレスリングはおろかトレーニングすらできないではないか。痛みは堪えることができると思い躊躇することなく完全に曲がるまでリハビリテーションする途を選らんだ。
 この訓練、ホチキスどころの騒ぎではない痛みが待っていた。最初のこの訓練で失神した。痛みで失神したのは初めてだが、想像を超える痛みに神経も体も保たなかったのだろう。
 二度目の訓練は恐怖だった。そしてやはり痛みで失神した。
 この大怪我、11月12日に西日が原因で起きたバイクの単独事故によるものだ。

 やっと昼食後に携帯電話をかける場所まで出られるようになったと言って、昼休みも終わろうかという頃にGYM仲間のダイちゃんから電話をもらった。
 なんだ、右膝の筋を断裂したどころの話じゃなかったんじゃないか。みんなで心配してたんだぞ。でも、声の調子から精神的なダメージからも回復しているのが伝わってきた。
 強いぞダイちゃん!
 来年1月中旬には退院できそうだって。こんな大怪我をして二ヶ月で退院って言うのはスゴイじゃないか。エッ、今までの記録は四ヶ月だって、医者がそう言ったんだ?
 何でもいいや新記録での退院待ってるよ。