2007-03-05

盤錦 (6)

 気になる雪は降り止み空は真っ青の快晴だが相変わらず交通機関は麻痺している。とにかく今日中に北京までもどらなければ明日の飛行機に乗ることができない。じっとしていても誰も北京まで連れて行ってくれないのだ。
 この雪ではタクシーも走っていないだろう、わずか5kmだ、とにかく盤錦駅まで歩こうとお世話になった于くんの家を後にする。于くんの家はこの棟の4ブロック目の5階。
 幸い、大通りに出たところでタクシーを捕まえることができた。5km歩くのも良い体験かと思ったがこんな雪道に大きなスーツケースでは楽な方がいいに決まっている。
 途中で大型トラックが腹を見せて横転していた。昨夜の吹雪のすごさを忍ばせる光景だ。
 薄暗い盤錦駅構内に入っても未だ寒い。周囲の大きな窓は二重窓でその下にはスチーム暖房が設置されているのだが暖房の効果はほとんど無い。鞄を開けてネル地のシャツと毛のチョッキ、さらにレザージャケットを引っ張り出して着込む。それでも暖かくなったといえる状態ではなかった。
 北京行きの列車は何時来るか分からない状況だ。やっと入って来た上海行きの列車で天津に行くことにする。プラットホームに入ってきた列車は既に通路まで満員。列車のドアの前も人で一杯というラッシュアワー並みの混雑。そこを鞄を片手で引きずり上げ前の人を引きずり降ろしてでも乗り込むという力まかせの乗車になってしまった。乗車するにはプラットホームからステップを三四段上らなければならないので大きな荷物を持っている乗客はどうしても不利だ。私のお陰で乗り損なってしまった名も知らぬ中国の友人よ許せ。
 一番空いている最後尾の車輌までまたしても強引な移動を敢行。たどり着いた列車の最後尾でよほど惨めな顔をしていたのだろう、左に立っている青年が席を譲ってくれた、多謝、多謝。
 その席を譲ってくれた青年はいつの間にかいなくなってしまった。きっと私たちと同じように切符を持たずに乗車したので切符でも買いに行ったのだろう。もちろん私たちは乗車後直ぐに列車乗務員を捕まえて乗車券を購入している。実は乗車する列車を土壇場で変えたために乗車券無しで、乗車口脇に立つ駅員が切符の提示を要求する大声と制止を振り払って強引に乗り込んで来たのだ。
 前の女性は流ちょうな英語を操るのに現在無職。左の女性は一人旅。後は天津まで6時間半の旅だ。