2021-04-10

椿の庭

表現の手法は異なるが、人生をどのように終えるのかを描いた「ノマドランド」と対になる作品だと思う。
夫の四十九日の法要を無事に終えた絹子(富司純子)は、海を見下ろす一軒家で長女の忘れ形見・渚(シム・ウンギョン)と二人で暮らしている。
緑濃い庭の四季折々の移ろいと共に絹子も少しずつ弱ってゆき、この家を手放さなければならなくなる。
そんな折、絹子が漏らした一言が『もし私がこの地から離れてしまったら、ここでの家族の記憶や、そういうもの全て、思い出せなくなってしまうのかしら』
病んで弱った祖母が何故薬を飲むのを止めたのか、渚には理解できない。
終盤で、耳に思い切り噛みつかれたような痛さで響いた絹子の一言は『貴方は肝心なときにいないのよね』
好きな庭を眺めながら息を引き取った絹子に、かつて『大切に使わせて頂きます』と約束してこの家を買い取った戸倉(田辺誠一)は、直ぐに家を取り壊してしまう。絹子が漏らした一言に対する上田義彦監督の回答だろうか?

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